国際税務とは?+おすすめの勉強法【実務経験者がわかりやすく解説】

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国際税務とは何でしょうか?

・よく聞く言葉で、なんとなくわかるような気がするけど、具体的には説明できない。
・国際税務に詳しくなりたいけど、難しそうでどうやって勉強すればわからない。

と思っていた時期が私にもありました。

この記事では次のことを解説します。

  • 国際税務とは何を指しているのか?
  • 国際税務は難しい? どうやって勉強すればいい?
目次

国際税務とは? 日本の税務と外国税務の観点から解説

一般的に国際税務というと、「日本の税務で外国との取引に関連するもの」を指していることが多いように感じます。
国際税務は、「日本の税務」と「外国の税務」と大きく二つに分類できます。

日本の税務(外国の会社との取引に関連するもの)

一口に日本の税務といっても、日本の親会社としての立場か、外国の親会社の日本子会社としての立場かによって関係する法令が異なります。
まずは、日本の税務について細分化して考えてみましょう。

日本の親会社として

  1. 外国子会社合算税制(いわゆるタックスヘイブン対策税制)
  2. 簿価減額規定(いわゆるソフトバンク税制)
  3. 外国子会社からの配当の益金不算入

それぞれのイメージは図のとおりです。

外国子会社合算税制は、一定の外国子会社に関して、海外での利益などが日本親会社の法人税の確定申告書上で、日本会社の利益(=益金)として合算されてしまう税制です。

簿価減額規定は、2020年(令和2年度)の税制改正で新しく創設された税制。
一部ではソフトバンク税制と呼ばれたりしていますが、それはソフトバンクのARM売却スキームのような節税策を封じるために導入されたからとか。とはいえ、昔からタックスプランニングの一つとして有名な手段だったようですが。
日本の親会社が、一定の外国子会社から配当を受け取った場合、日本親会社が有するその外国子会社の株式簿価(税務簿価)が減額される制度です。
その結果、のちに外国子会社を売却・清算した場合に、配当を受けた分だけ損失が圧縮されることになります。
※ 実際の税制はもっと複雑ですが、簡略に説明しています。

外国子会社からの配当の益金不算入は、外国子会社からの配当について日本の親会社の法人税確定申告書において配当の95%は利益に含めなくてよい(=益金不算入)とする制度です。
この場合、海外の子会社で配当の支払い時に源泉税が課されていた場合、その海外での税金については以下で説明する外国税額控除の適用はありません。

外国の親会社の日本子会社として

  • 過少資本税制
  • 過大支払利子税制

どちらも日本の会社が支払った利息について法人税の確定申告書上において、費用計上を認めないもの(=損金不算入)。
日本親会社が海外子会社に対して支払利息を支払うケースはさほど多くないことから、こちらに分類しています。
イメージを図解しました。

共通するもの

  • 租税条約
  • 移転価格税制
  • 外国税額控除

租税条約は、よく耳にするかもしれません。日本と海外との取引で、日本で源泉徴収の対象となる取引について、日本の税務署へ租税条約に関する届出書を提出すると、源泉所得税が免除・軽減される制度です。

移転価格税制は、日本と海外の関連会社との取引に関して、第三者との通常の取引価格(=独立企業間価格)で実施されていない場合に、独立企業間価格を超える部分又は下回る部分が、法人税の確定申告書上、加算または減算される税制です。
税金の制度ではあるものの、ビジネス面から分析を行う要素が強い印象です。

外国税額控除は、日本の会社が海外で納めた税金について、法人税の確定申告書で精算することを認める制度です。

外国の税務

外国の税務も国際税務の中に含まれるでしょう。

当たり前ですが、国によって税金の制度は異なります。外国での課税関係は日本の税務専門家の管轄外なので、海外の専門家に相談をする必要があります。
インターネットや書籍でも外国の税制に関する情報がありますが、税制は改正や裁判などで毎年のように状況が変わるため、常に最新の情報を取得することが推奨されます。

Big4や中堅会計事務所では、海外の事務所と提携し、そのネットワークを通じて調査をおこないます。
このような事務所で経験を積むと、「この国では特にココは気をつける必要がある」ということや、「ココは大丈夫」ということがわかってきます。

外国の税務に興味がある人は、まずはUSCPAの勉強を通じて米国税務の勉強をするのもいいかもしれません。

国際税務のおすすめ勉強法

レベル別におすすめの勉強法を紹介します。
まずは本を読んで、慣れてきたら実務の合間に本を参照しつつ、ニュースレター&podcastがおすすめです。
一通り勉強したら実践あるのみです。

初級者におすすめの書籍

圧倒的におすすめの書籍は、「図解&ケース 国際タックスプランニング入門(第2版) 田川利一 (著)」です。
基本的な国際税務の考え方から、外国の税務や複雑なタックスプランニングのスキームまで、図解でわかりやすく解説しています。
国際税務関係の書籍を10冊以上は読んでいますが、他の初心者用の書籍は不要です。もちろん初心者だけではなく、上級者にもおすすめです。

中級者〜上級者におすすめの勉強法

本を読む

国際税務全般の書籍としては、「国際取引と海外進出の税務 仲谷 栄一郎他 (著)」が手元にあれば十分です。
こちらの書籍は条文番号や、細かい適用関係まで記載されており、国際税務を勉強する場合には必携です。

¥5,940 (2021/10/07 08:01時点 | Amazon調べ)

国際税務では頻出の分野であり、複雑なタックスヘイブン税制については、専門の書籍を一つ手元に置いておきたいところです。
Q&Aタックスヘイブン対策税制の実務と対応 森濱田松本法律事務所 (著)」がおすすめです。
Q&A形式でタックスヘイブン税制の内容が網羅されているため、わかりやすいです。

ニュースレターを読む

最新の情報をキャッチするには、Big4のニュースレターを定期的にチェックするのがおすすめです。
私は1週間に一度チェックしています。
Google Chromeでこれらのリンク先を一つのブックマークのフォルダに保存し、フォルダを「Ctrl+クリック」することで一度で全てのタブが開くようにすると便利です。

・PwC税理士法人(ニュースレター)(寄稿記事)(英語ニュースレター
・デロイトトーマツ税理士法人(ニュースレター)(税務専門誌掲載記事一覧)(英語ニュースレター
・EY税理士法人(ニュースレター)(情報センサー
・KPMG税理士法人(ニュースレター

Podcastを聴く

日本語のPodcastでオススメはありませんが、別の記事で英語のものを紹介しています。
英語の勉強にもなるので個人的にはオススメです。興味のある方はこちらをご覧ください。

まとめ:国際税務はおもしろい

国際税務は、日本と海外をまたぐ取引に関係する税金のことです。
実務を経験すればするほど、壁にぶつかり、難しいと感じることがあります。
難しいからこそ、やり甲斐があり、勉強しようと考えるのではないでしょうか。

国際税務を勉強するには、まずは本で知識を身につけることが大事です。
慣れてきたら実務の合間に本を参照しつつ、ニュースレター・Podcastで最新の情報をチェックするのがおすすめです。

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